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2007/11/15 [ Observatoire ]

'オブセルヴァトワール' リストウォッチ

かつて時計製作は、専ら精度の追求に捧げられる分野でした。天文台時計=オブセルヴァトワール ウォッチと呼ばれるジャンルが生まれたのもそのためです。これらの時計は、一見すると特別洗練された作りというわけではありませんでしたが、ムーヴメントの機能において、技術上のあらゆる重要な点で比類のない精度を発揮していました。カナと歯車の表面は許容度の限界で完璧なまでの高度な技術をもって研磨され、テンプとゼンマイは事前のテストを経て選択され、各真、軸受け、軸の寸法は完全な出来でした。精度追求のためだけに作られたこれらの時計は、検査条件下で1日に10分の1秒の精度の誤差しか生じず、この21世紀でさえ、機械式時計において同レベルのものは存在しないと言っても過言ではありません。一般に、天文台時計が市販用に作られることはありませんでした。時計メーカーが互いに競い合い、最も高い精度を実現したという業績を証明するためのもので、天文台コンクール時計として計時コンクール用以外の目的はなかったからです。


ハイビートと呼ばれる機械式ムーヴメントの導入に続いて、1970年代に電子やクオーツによる計時が達成されると、天文台の公式検査の伝統は薄れ徐々になくなっていきました。その代わりに採用されたのが、大量の量産品の品質検査としてケースに組み込まれていないムーヴメントを電子的に一括試験する方法でした。試験のために提出されるムーヴメントの数が年々増え続けたことから、大量のムーヴメントの計時精度測定を処理するための機関が設けられました。これが、COSC(スイス公式クロノメーター検定局)です。


オブセルヴァトワールウォッチ・メーカーの復活

偶然にも、カリ・ヴティライネンは、この種のかつて天文台コンクール時計用に製作されて一度も組み立てられたことのないプゾー製のキャリバームーヴメント(Peseux 260 ébauche)をいくつも手にすることができました。これらのムーヴメントを綿密に調べた後、ヴティライネンはこの名品をベースキャリバーとしてリストウォッチの限定シリーズを創作することを決断しました。一つ一つのムーヴメントは完全に分解され、機能調整と技術テストを経たすべてのムーヴメントには、外観的にも技巧的にも最も高いレベルに達するために、面取り、エッジ研磨、ペルラージュ装飾を手作業で施します。この作業が終わると、見事なギョーシェ装飾のダイアル、ケース、針とともに、ヴティライネンのアトリエ製であることが瞭然たる、独特のスタイルを持った時計の姿が浮かび上がるのです。


グロスマンタイプの内側カーブを持つひげゼンマイ

傑作とも言える歴史的キャリバーにふさわしく、他に例のないカーブがひげゼンマイに採用されました。最高品質の時計に用いられるブレゲタイプを外側のカーブに、あまり知られていないグロスマンタイプを外側と同じく重要な内側のカーブに持ったひげゼンマイです。グロスマンは、ひげゼンマイの内と外の両面のカーブに等分の配慮を汲んだテクニックを提唱しました。実際にほとんど知られず不用の代物として忘れられていた天文台時計がグロスマンタイプのカーブを搭載した21世紀最初のオブセルヴァトワール リストウォッチとして蘇り、過去の時代の時計製作技術が現在でも名誉に値する地位と価値を保持できる、という事実を証明しています。


ブザンソン天文台が2007年にクロノメーター認定を再スタート

この並外れた品質と歴史的背景をもとに、2007年4月には、カリ・ヴティライネンとブザンソン天文台に勤めるフランソワ・メイエールとの偶然の出会いが生まれました。ヴティライネン製作のオブセルヴァトワール ウォッチを天文台のクロノメーターテストにかけるという依頼でした。問題の時計がきわめて特殊で、しかも天文台の歴史を分かち合うものであることを考慮し、1970年代の終わりから専ら研究活動に専念していたブザンソン天文台にクロノメーター認定という作業を復活させる絶好のチャンスだったと言えるでしょう。カリ・ヴティライネンの時計は、ブザンソン天文台がクロノメーター認定書を定期的に発行しなくなって以来、このような形で認定された最初の時計となりました。


ブザンソン天文台のクロノメーター認定は、COSCのそれとは異なり、単にムーヴメントだけの検査でなく、ケースを含める時計全体の組み立てを検査します。すなわち、完成された状態で時計全体が真のクロノメーターとしての資格を与えられるのです。COSCのシステムでは、たとえムーヴメントがテストをクリアしても、時計の他の部分の組み立てやケースへの組み込み複雑機構モジュールの追加が必要です。ですから、完成した時計がテストを終了した時点で持つ精度を維持し続けるという公式保証 (おそらくブランド自身の保証を超えるようなもの)は、存在しないのです。


ジュネーブ時計グランプリ 2007

2007年のこうした時計製作における取り組みは、ヴティライネンとアトリエにとって非常に目覚ましいものでしたが、そこにはさらに驚きが待っていました。同年11月15日に開催されたジュネーブ時計グランプリのメンズウォッチ部門 GPHG '07(Grand Prix d'Horlogerie de Genève 2007)Prix de la Montre Hommeで、グランプリ候補としてノミネートされたメジャーマイナーブランドの時計9個からヴティライネン 'オブセルヴァトワール' リストウォッチが受賞品に選ばれたのです。独立時計師カリ・ヴティライネンとアトリエは、細心の注意が注がれたメカニズムと同時に、独特なデザインとクラシックな外観が高く評価されたことになります。この権威ある賞は、スイス時計産業の関係者や有識者によっって与えられ、時計製造の優れた専門技術に対する公然の評価と、比類ない時計メーカーの創作へのこだわりを示すものです。


<技術仕様>

オプセルヴァトワール プゾー製キャリバー(Peseux 260 ébauche)、手巻き

直径30mm、厚さ5mm

19石

毎時18,000振動

ブレゲ-グロスマンひげ搭載13.3mmテンワ、ミーンタイムスクリュー付きフリースプラングテンプ

レッドエンドストーン搭載ガンギ車

コート・ド・ジュネーブ、面取り、ペルラージュ装飾総手仕上げ

18Kゴールド製ケース、直径38mm、厚さ10.5mm

18Kゴールド製ダイアル、ギョーシェ装飾

18Kゴールド製アップライドインデックス

18Kゴールド製ハンズ

18Kゴールド製バックル、手縫いのクロコダイルストラップ

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